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福岡地方裁判所 平成10年(わ)468号

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官平野辰男出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人田中秀雄を懲役一年に、被告人株式会社成和建設工業を罰金四〇〇〇万円に処する。

被告人田中秀雄に対し、この裁判が確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社成和建設工業(以下「被告会社」という。)は、北九州市八幡西区穴生四丁目六番一〇号に本店を置き、鉄筋加工取付業等を目的とする資本金六〇〇万円(平成七年七月二七日から資本金一〇〇〇万円)の株式会社であり、被告人田中秀雄は、被告会社の代表取締役として被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れよと企て、架空・水増し外注費を計上するなどの方法により、所得を秘匿した上

第一  平成四年五月一日から平成五年四月三〇日までの事業年度における被告会祉の実際所得金額が二億七三六二万九八六三円(別紙1の1、2の修正損益計算書及び修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成五年六月二九日、同市八幡東区平野二丁目一三番一号所在の所轄八幡税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額が一億〇〇〇二万三一二一円で、これに対する法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成一〇年押第一一八号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会化の右事業年度における正規の法人税額一億〇一五二万六六〇〇円と右申告税額との差額一億〇一五二万六六〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成五年五月一日から平成六年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五八四四万六二九〇円(別紙3の1、2の修正損益計算書、修正製造原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成六年六月二八日、前記八幡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零で、これに対する法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五八四一万八二〇〇円と右申告税額との差額五八四一万八二〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告会社代表取締役及び被告人田中秀雄の当公判廷における供述

一  被告人の検察官(乙二ないし七)に対する各供述調書

一  田中昭子(甲二二ないし二七)、松本悠紀子(甲二九)、本田敏春(甲三二)、田中美恵子(甲三三)、永田洋生(甲三〇)及び網中郁彌(甲三一)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲六ないし二一)

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(甲一)

一  商業登記簿謄本(乙二〇)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成五年度四月期)(甲四)

一  押収してある平成五年度四月期法人税の確定申告書一綴(平成一〇年押第一一八号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成六年度四月期)(甲五)

一  押収してある平成六年度四月期法人税の確定申告書一級(同号の2)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項(七四条一項二号)に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は平成七年法律第九一号による改正前の刑法(以下「改正前の刑法」という。)四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとし、さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については法人税法一六四条一項(一五九条一項)により同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金四〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告会社のワンマン経営者であった被告人が、大手ゼネコンから認められて事業が軌道に乗り、大きな利益を出した平成五年度四月期及び平成六年度四月期の所得金額について、法人税の確定申告の際、実際の所得金額を偽り、欠損金を計上したり、所得金額を零として計上して申告し、多額の法人税を免れたという事案である。

被告会社が免れた税額は、二年間で合計一億五九九四万四八〇〇円と多額であり、ほ脱率も両年度とも百パーセントである点で、本件犯行は悪質である。被告人は、本件犯行の動機として、不況に備えた蓄財目的を挙げるが、その背後には被告人の納税意識の欠如を看取でき、自己中心的な犯行と言うことができるのであって、その動機を有利な情状と認めることはできない。また、ほ脱の方法も、架空・水増し外注費や架空雑給、架空不動産売却損などを会計帳簿などに計上させ、さらにそれを仮装するために、工事発注元としての地位を利用して、取引先の水増し・架空領収書を作成したり、架空作業員を約半年で入れ替え、その雑給から源泉所得税を控除したり、期末手当を支給した形にするなど、巧妙かつ多様な方法を用いた計画的・継続的犯行である。さらに、本件のような脱税事件は、我が国の申告納税制度の根幹を揺るがしかねず、源泉徴収制度の下でほぼ確実に税を徴収される多数の給与所得者の法感情は厳しく、強く非難されるべきであり、被告人及び被告会祉の刑事責任は重いと言わねばならない。

他方、被告会社は、本件事件の起訴前に修正申告し、平成二年度まで遡った法人税及び法人特別税並びにそれぞれの重加算税及び過少申告加算税など、延滞税を除いて約七億円を完納し、被告人自身も三〇〇万円の贖罪寄付を行い、かつ右税金の支払いを被告人の蓄財した預貯金などの中から支払っていること、本件犯行の発覚後、顧問税理士を変えたり、会社の経理体制を刷新したり、被告人も自らけじめを付けて代表取締役の地位を退くなどして適正な会計処理・経営に努めていること、捜査機関に全面的に協力し、被告人も十分に反省していることなど有利な事情も存するので、以上諸般の事情を考慮し、被告人には主文掲記の刑を量定の上、再度自力による更正の機会を与えることとし、被告会社に主文掲記の罰金刑を科することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 重富朗)

別紙1の1

修正損益計算書

自 平成4年5月1日

至 平成5年4月30日

株式会社成和建設工業

<省略>

別紙1の2

修正製造原価報告書

自 平成4年5月1日

至 平成5年4月30日

株式会社成和建設工業

<省略>

金額欄( )内は、内数である。

別紙2

ほ脱税額計算書

自 平成4年5月1日

至 平成5年4月30日

株式会社成和建設工業

<省略>

別紙3の1

修正損益計算書

自 平成5年5月1日

至 平成6年4月30日

株式会社成和建設工業

<省略>

別紙3の2

修正製造原価報告書

自 平成5年5月1日

至 平成6年4月30日

株式会社成和建設工業

<省略>

金額欄( )内は、内数である。

別紙4

ほ脱税額計算書

自 平成5年5月1日

至 平成6年4月30日

株式会社成和建設工業

<省略>

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